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二人が帰っていると、前を一匹の猫が通り過ぎた。猫の首には首輪がついていて鈴が、チリン、チリンと音がなっていた。そして、猫はゆきこ達が見ている前で道路に飛び出した。
「…あの猫危なくない?」
猫は道路の真ん中で立ち止まっている。しかし、後ろからはトラックが向かってきていた。
ゆきこが猫を助けようと足を一歩前に踏み出した時、みきに腕を掴まれた。
「駄目だよ…今ゆきこがいったら絶対、怪我しちゃう…」
「でも…」
「後、三ヶ月で地区大会なんだよ!?こんな大事な時期に怪我しちゃったらどうするの!?」
「…助けられる命なら私は助けたい!」
「ゆきこーーー!!」
みきの腕を払って、ゆきこは走り出した。みきの叫び声が聞こえた気がした。
ゆきこが猫を抱き締めた時、身体はとてつもない衝撃を受け、中を舞った。そのとき、猫から手を離してしまった。
そして、そのまま地面に叩き付けられた。
「ゆきこ!!」
みきはゆきこに駆け寄り、血だらけの力無い手をギュっと握り締めた。
「馬鹿…だから駄目だって言ったのに!!」
何か言おうと思ったが、体に力が入らず、もう話す気力もなかった。上からはしょっぱい水が雨のように落ちてくる。だんだん視界がぼやけてきて、身体から力が抜けた。
最後に見たのはポロポロと涙を流すみきと自分の血で真っ赤に染まった地面だった。
そして、どこからか猫の鳴き声と鈴の音が聞こえた。
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