―病の名は―

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「んー…お前、もう少し食べろ」 「やっぱりですか?」 雪斗の自室で、雪斗は松本に診てもらえることになった。着物の袷を開き、前は布で隠しお腹に残る傷を診てもらっていた。 「…この傷跡だが…」 「大丈夫です。正直に言って下さい」 「一生、残るだろう」 わかりきっていた言葉に、雪斗はそっと傷跡に手を添えた。そこだけ肌が引きつっていた。 女人として、あってはいけない傷跡。だが後悔はしていない。それでも、どうしても気になってしまう。 「女人としては、失格ですよね」 「…雪斗」 それで、空を守れたのだから、良かったのだろう。この傷跡は、現代に戻っても残ってくれるのだろうか。この時代にいたという唯一の証。 「あとは何か気になることはあるか?」 「え、と…」 迷うように目を伏せたとき、訊こえるはずのないと思っていた襖の開く音が訊こえた。 「おい。診察中だ」 「わかってますよ」 聞き慣れた声に、雪斗は布を持つ手を強くし、少しだけ後ろを向き固まった。そこにいたのは…。 「沖田。お前はこいつの性別わかっているのだろう?」 「はい。もちろんです」 「だったら…」 「だからですよ。松本先生に限ってそんなことはないと思いますが、万が一を考えて…」 松本は医者だ。空雅が保健医だったこともあり、全く警戒していなかった。ストンと腰を下ろし、居座るつもりの総司に、雪斗は助けを求めるように松本を見た。 「お、沖田さんっ!?もしものことなんて万が一にもありませんからっ!!その…出ていてください」 「いやですよ。それより松本先生、雪斗の腹の傷は消えないんですか?」 「あ、ああ。消えることはないだろう」 「そうですか…」 余り、見せたいものではない。それでなくとも、切り傷や擦り傷が身体中にあるのに、一生残る傷が身体に刻まれているなど、普通ならば絶対に誰にも見せたくない。 .
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