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それから、ゆきこと父の二人暮らしだ始まった。
父が病院に駆けつけたときにはもう遅く、母は帰らぬ人となっていた。母の姿を見た父はその場で泣き崩れた。何度も母の名を呼びながら。
ガシャンッ
パリンッ
部屋に食器が割れる音が響いた。父は、変わった。母の死を境に今まで築き上げてきた自分を壊すかのように。
ゆきこに暴力を奮うようになり、酒に酔い煙草を吸い家に帰らなくなった。機嫌の悪い日は、作った料理をひっくり返されいきなり殴られることもよくあった。
それでも、ゆきこは信じた。元の優しい父に戻ることを。母との最後の約束を破らないために。
みきの両親には度々呼ばれ、説得された。ゆきこの母とみきの両親は親友で、その関係は母が亡くなるまで続いていた。
中学に入学し、家に居る時間が短くなると、父と接する時間も短くなっていった。父は、決して顔や服で隠れない箇所には何もしなかった。
そんな時に、空雅と出会った。大企業の息子であると同時に裏の仕事もこなし、さらには保健の先生として学校にいる空雅の事情を知った時には、椅子から落ちるかと思った。
そんな時だった、少しずつ少しずつ、干からびた心に水が与えられていた頃に、あれは起きた。
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