―温もり―

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「…私が、此処からいなくなったのは…父を止めようと、思っていたからです。勝手に此処を出て行ったのに…また、此処に戻ってきた私を…受け入れてもらえますか?」 誰も、口を開けなかった。ゆきこの話は、想像していたものよりも、残酷だった。母が死に、父が他の女性と交わる現場を目撃し、そこで闇に突き落とされ、男に無理やり汚された。 やはり、こんな自分では受け入れてもらえないのだろうかと顔を俯かせると、近藤が立ち上がりゆきこを抱き締めた。 「よく、我慢したな…もう大丈夫だ」 「こ、んど…さん…」 大きく暖かな温もりに、ゆきこは涙を流した。誰にも話したことはなかった。どんなに忘れようとしても、忘れられなかった。 「ゆきこちゃん…話してくれてありがとう」 近藤から離し、今度は菊がゆきこを包み込んだ。小さな身体を震わせ泣くゆきこを、菊は本当の妹のように感じた。 菊が手を離すと、次は山南と一だった。二人はゆきこの髪を撫でた。新八は、抱き潰してしまう危険性があるので、左乃と平助が抑えていた。 土方は総司を見て形のいい眉を寄せた。一番ゆきこを考えているはずの総司が動かないのだ。 「ゆきこ、あなたは、もう私たちの仲間ですよ」 山南の言葉に、皆が頷いた。ゆきこは涙を流しながらも頷いた。いいのだろうか。父のことを考えなくても、あの日のことを忘れても、いいのだろうか。 「ありがとう、ございます」 ゆきこは声を震わせながらも、心からの感謝を伝えた。この時代で、この人たちと共に歩んでいくことは、許されるのだろうか。 「ゆきこ。今日は疲れただろう。ゆっくり休め。総司、ゆきこを連れて行きなさい」 「はい」 静かに立ち上がった総司は、ゆきこの目尻に溜まった涙を拭き、手を取った。感じる温もりに、ゆきこは安堵の息を吐き出した。 .
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