―癒えない傷―

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ゆきこが起きると慣れ始めている天井が目に入った。隣を見ると総司が寝ていた。 もうすっかり馴れているこの風景。今更ながらに、帰ってきたんだと実感する。 ゆきこは総司を起こそうと立ち上がって寝ている布団の横に座った。そして体を揺すった。 「総司さん起きて下さい。朝ですよ?」 呼び掛けると、総司はうっすらと目を開け微笑んだ。その笑顔は、見る度に心が暖かくなる。 「おはようございます」 「はい。おはよう御座います。稽古いかなくて大丈夫ですか?」 そう言うと、総司の笑顔が固まって一拍の後、慌てて立ち上がり着物を持って急いで部屋から出て行った。…と、思ったらヒョイと顔を出した。 「行ってきます」 小さく手を振ると、総司は頷き、回れ右して急いで道場に向かって走り出した。 ゆきこは嬉しそうに微笑んで着替え始めた。着替え終わり、ゆきこは台所に向かった。 台所に近づいていくにつれていい匂いが漂ってくる。このご飯を食べるために隊士達は練習に励む。 覗いてみると、見慣れた背中があった。 「菊姉」 呼び掛けると、菊が振り返った。ゆきこは台所に入って菊の隣に移動した。 「ゆきこちゃん。どうしたの?」 「なにか、やることはないですか?」 ゆきこの質問に菊は少し考えてから、ニッコリ微笑んだ。あの日から、重かった心が軽くなった。 「洗濯をお願いしてもいい?」 「はい!」 頭を下げ、ゆきこは台所から出て行き、洗濯物が溜めてある場所に向かった。 その場所からは鼻をツン…とつくような独特な匂いが鼻をつく。ゆきこは腕捲りしてから、それらを桶に入れられるだけ突っ込んだ。 その光景を見た隊士達は揃って首を捻った。その目線の先には洗濯物がいた。 じゃなく、洗濯物で見えなくなったゆきこがいた。突っ込めるだけ突っ込むといつの間にか前が見えなくなる程積み上がっていた。 なんとか、干し竿がある所までたどり着き、桶を置いた。 そして、井戸に水を汲みに行った。 井戸の水を汲んできて、桶に水を入れた。そしてそれらを一枚一枚、丁寧に洗っていく。 .
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