―癒えない傷―

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総司はゆきこが眠りに落ちたのを確認し静かに立ち上がって部屋から出た。 部屋を出た総司は静かにある部屋へ向かっていた。もうすっかり遅い時間のため総司が歩く音以外、聞こえてこない。 総司はある部屋の前で足を止めて声を掛けた。部屋の主は遅い時間にも関わらず起きていた。 「土方さん。総司です」 「……入れ」 低い声に足され、襖を開けると、土方は筆を置いて書物を閉じた。総司は土方の後ろに座った。土方は振り返ると思わず顔をしかめた。 「そ、総司?」 「はい?」 低い声に土方は本気で時間を巻き戻したかった。だが年上としての意地がある土方は一応聞いてみた。 「んで、なんでそんな怒ってんだ?」 「別に怒ってませんよ。それよりお話ししたいことがあります」 その真剣な表情に土方も気を引き締めた。ただ、総司の言葉は土方の予想を遥かに超えていた。 「ゆきこを、新選組から離れさせようと思うんですが」 一瞬、土方は何を言われたか理解出来なかった。だが理解した瞬間、夜中ということも忘れて叫んでいた。 「はぁッ!?何言っていやがる!?」 「言い方が悪かったですね。でも、此処にいない方がいいのは確かです」 あまりにも真剣な表情と声音に土方は総司が本気だと悟った。だが何故か理解出来なかった。 「何故だ?」 「あなたは此処に、男所帯の此処にゆきこが、女人のゆきこが此処に良いとお思いですか?」 「……確かにな。だが、何故いきなりそう思った?」 総司は悔しそうな顔で、先程ゆきこに何があったのか話し始めた。 話し終わった部屋には沈黙が続いていた。そして、先に沈黙を破ったのは土方だった。 「分かった…近藤さんには俺から話しておこう。それと、陽向屋にも、文を送っておく」 「お願いします」 立ち上がって出て行こうとした総司を土方が呼び止めた。どうしても、確認したいことがあった。 「なんですか?」 土方は一瞬躊躇ったように目を伏せ、一つだけ訊いた。これ以外は訊くつもりはない。 「お前はそれでいいのか?」 総司はそれを訊かれるのことをわかっていたように、諦めたように微笑んだ。 「何言ってるんですか?私から言い出したんですよ?」 「ちげぇよ。ゆきこがお前の傍から離れて、他の奴の傍にいるのに耐えられるのかって聞いてんだよ」 .
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