―癒えない傷―

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土方から文を見せてもらった総司は庭に面している縁側に腰掛けていた。 ゆきこは目を覚ましたが、昨夜のことが大分心に残っているようだった。 暫く目を瞑って俯いていると、後ろで気配がして、振り返ると一がいた。 「一君どうしたんですか?こんな時間に」 「それはこっちの台詞だ。あんたこそ、こんな夜更けになにをしている」 何も言わずに総司はただ微笑み、静かに庭に目を向けた。一は無言で総司の隣に腰掛けた。総司はそれを驚いた表情で見つめた。 「夜は冷える。そんな薄着でなにを考えている?」 「少し頭を冷やしたくて」 前を向いてそう呟くと、肩に暖かさと重みが加わった。それは一が着ていた羽織りだった。 「冷えますよ?」 「あんたに言われたくない」 「でも…」 「いいから」 そこまで言うなら…と、総司は斎藤の上着を借りることにした。 「で?」 「はい?」 「そんなになるまで、なにを考えていた」 一に指を差された先には総司の手。ただ、その手は白くなる程強く握られていた。手を開くと少し血が出ていた。顔を上げると一と目が合った。 一は無言で、懐から手拭いを取り出して総司の手を取り、巻き付けた。 「考え事も結構だが、少しは体の心配をしたらどうだ」 「あはは。すいません」 そう言いながらも総司はどこか上の空だった。一はそんな総司の様子にすぐに気付いた。 「一君」 「なんだ?」 「もし…もしですよ?好きな女人がいるとします。その女人が自分の傍にいたら危ないんです。自分の傍に居なかったら幸せになれるんです。他の男と…そんな時、一君ならどうしますか?」 なんでそんな事を聞くのか…?なんとなく理解したが、それを総司が察する前に一は答えた。 「俺はよく分からない。が、それは男の勝手な考えだ。その女人はその男といた方が幸せだったんじゃないか?知らない男なんかの傍にいるより、その男の傍にいるだけで幸せなんじゃないか?俺は女人じゃないからよく分からないが、俺はそう思う」 ただ、思ったことを言うと、総司はまるでそんなこと言われると思っていなかったように驚いていた。 「まさか一君がそこまで言ってくれるなんて予想外ですね」 「…うるさい」 .
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