―癒えない傷―

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土方は近藤の部屋にいた。昨日の総司から聞いた話しを近藤に話し、一つの案を持ち出した。 「そうか…総司がなぁ…」 「…どうする?」 近藤は額に手をあて眉間に皺を寄せた。土方も、何度も他に方法がないか考えた。どうにかして、二人が幸せになる方法を。 「ゆきこは泣くだろうな…どうすれば…」 二人を離さず、一緒に居させてあげたいと思う。だが、総司が言っていた事は正しい。それでも、二人を離してもいいのか。 「…せっかく、総司が人を好きになったのになぁ…」 「クソッ…」 「落ち着けトシ、儂らが何かやっても仕方がない。庇うような事をしたら、あの二人は嫌がる」 分かっている。分かっていても、何か出来ないか…そればかりが頭を巡る。土方はやり場のない気持ちを吐き出すかのように畳に拳を振り下ろした。 「とりあえず明日の早朝、幹部達に召集を掛ける」 「あぁ…山崎」 土方が呼び掛けると、襖の向こうから声が掛けられた。「入れ」声を掛けると襖が開いて黒い忍装束をきた忍が入ってきた。 「ちょっと待ってろ」 土方は近藤に文机を借りて文を書いた。書き終えると、それを山崎に渡した。 「これを幹部達に渡しといてくれ」 「御意」 そう言って山崎は文を受け取って姿を消した。土方は壁に寄りかかって目の上に腕を乗せた。近藤は土方の隣に座った。 「どうしてだろうなぁ…せっかく掴めそうな幸せなのにな…あの二人が笑顔になれる日を、見てみたかった」 「ゆきこもだ…んで幸せになれないんだよ…」 どうして幸せになれない。二人はまだ付き合っていない。ただ、周りから見たら相思相愛な二人。これから、もっと、沢山のことを二人で乗り越えて。 「うまくいかねぇもんだな…」 「ああ…」 「ゆきこも泣くだろうが、総司はどうなるんだろうな…この前のように、いつか会えるということもない。もしかしたら二度と会えないかもしれない…」 「厳しいな…総司が傷つくのも、ゆきこが傷つくのも、そんなの誰も望んでいないのにな…」 近藤も土方も二人が一緒にいられることを思っているが、二人の願っている事とは反対に二人は離れていく。 .
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