―癒えない傷―

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早朝、土方達は広間に集まっていた。総司はいつもの笑顔を引っ込めて無言で目を閉じていた。部屋にはピリピリとした雰囲気が漂っていた。 そんな中、広間の障子が開いて残りの、原田、永倉、一、平助が入ってきた。四人が席に着くと、近藤が口を開いた。 「よく集まったな」 「なんでこんな朝っぱらから呼び出すんだよ…」 「うっせぇよ!黙って聞いてろ!」 土方が一括すると遅れて入ってきた四人が頭を抑えた。どうやら、遅くまで酒を呑んでいたようだ。 「土方さん…」 「あ?」 「あんま、叫ばないでくれ…二日酔いなんだ…」 三人の言葉に一も無言で頷いた。その様子に幹部達は驚いた。普段は真面目な一があの三馬鹿と一緒に酒を呑んでいたことに驚きがあった。土方は四人の様子に眉間に皺を寄せた。 だが、皆どこで違和感を感じていた。普段はちゃかしている総司が、入ってきたときからずっと無言で目を閉じているのだ。 その様子に気付いた左之が声を掛けた。 「総司?どうしたんだ?」 声を掛けると総司はゆっくり目を開けた。そして、冷たい目を四人に向けた。余りのも冷たいその目に四人は、目を見開いた。 「とりあえず、近藤さんの話しが先です」 総司のいつもより冷たい声に左之達は固まった。これは何かあったに違いない。近藤はそれを見ると声を掛けた。 「とりあえず、静かにしてくれ。これから話すのはゆきこのことについてだ」 そう言った瞬間、部屋の空気が張り詰めた。二日酔いで頭をあさえていた四人でさえも表情を引き締めた。 「これについては、総司から話してもらう」 「どういうことだ?」 総司は深く息を吐き、一度目を閉じた。広間にいる全員の視線を受け、総司は目を開けた。胸が、チクリと痛んだ。 「ゆきこには新撰組から離れてもらいます」 その言葉に、幹部達は息を詰まらせた。広間には沈黙が広がった。その中で一番最初に話したのは、平助だった。 「ど、いうこと?」 「言い方が悪かったですね。でも、此処にいてはいけません」 「どういう意味だよ!?」 左之と平助、新八は二日酔いのことも忘れて総司に詰め寄っていた。新八は特に必死だった。ゆきこを妹のように可愛がっていて、この新選組を家族のように思っている。 「総司、てめぇなに言ってやがる!?」 「新八!!」 土方の声にも新八は止まらなかった。総司は胸ぐらを掴んでいる新八の腕を掴んだ。 「…離して下さい」 .
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