―癒えない傷―

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「このッ…てめぇ!!」 「二人ともやめないかッ!!」 近藤の一喝に新八の動きが止まり、胸ぐらから手を離した。自分の席に戻って総司を見つめた。 「どういうことだか、ちゃんと説明してくれ。俺たちは何も知らねぇんだ」 「はい。実は……」 総司は土方に話した事をもう一度話した。話し終えた部屋では誰もが顔を伏せていた。そんな中、新八がポツリと呟いた。 「悪かったな…ちゃんと話しも訊かないで…いきなり怒ってよ」 新八の謝罪に総司は苦笑いで頷いた。説明も何もせずにあんなことを言われたら、誰だってああなる。 「それで…ゆきこはどうするのですか?」 「その事なんだが、陽向屋で働いてもらいたいと思う。あそこは大通りに面しているし、俺たちが立ち寄ることも多いし、なにより菖蒲がいる」 土方の提案に、その場にいた全員が渋々ながら頷いた。そこで、今までずっと黙っていた菊が口を開いた。 「…沖田君、あなたはそれでいいの?」 「はい」 その言葉に一が眉間に皺を寄せた。昨晩聞いていたのはこれか。だったら余計に納得出来ない。出来るはずもない 「総司。俺は昨晩言った筈だ、それはお前が一方的に考えて行っていることだ!!何がゆきこの幸せだ。笑わせるな!!いいか、ゆきこならな、お前の傍にいる方が幸せに決まっているだろう!!」 いつもは物静かな一がこんなに言うのを見て、総司を含めて皆驚いていた。総司は眉間に皺を寄せ口を開いた。 「じゃあ…どうしろっていうんですかっ!!私は、あの子が幸せになればそれでいいんです!!」 「だから、ゆきこを陽向屋に移動させてお前は安心したいだけだろうが!!」 何時もは余り喧嘩もしない二人。どちらかといえば、喧嘩を仲裁する側だった。二人の様子に、何時もとは逆に新八達が仲裁に入った。 「おいおい…やめろって」 二人が仲裁に入ると総司と一はヤクザのように睨み付けた。二人は、総司と一の睨みにビクッとして二人から離れた。 「五月蝿いんですよっ!!引っ込んでいてくださいっ!!」 「外野は黙っていろ!!」 滅多に怒らない二人に、新八と左之はすごすごと下がった。平助は、総司と一の肩に手を置いた。 「なに平助君?」 「邪魔するなよ…」 「いや、邪魔するつもりはねぇよ。たださ、総司に聞きたいんだけど、総司はゆきこのことが好き?」 .
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