―癒えない傷―

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「え?」 「好きなの?」 その言葉に、総司は平助と向き直って額に手を当てた。 「熱は無いようですね…」 総司の真剣な表情に、平助は総司の頭を叩いた。なんだか、最近叩かれるのが多い気がする。 「熱はない!確かに二日酔いでちょっと頭痛いけど、真面目に聞いてるから!」 「好きですよ」 それを聞いて、平助は総司に詰め寄って胸倉を掴んだ。どうしても聞きたかった。 「なんで…好きなのに離れようとするの?総司が守ってやればいいじゃん!!」 「好きだから、幸せになってほしい。そんな、そんな簡単に守ってやるなんていえるわけない」 その言葉に平助は納得のいかない顔で総司を見た。すると、平助の肩をポンと土方が叩いた。 「土方さん…」 「察してやれ斎藤君、平助。総司だって辛いんだ」 「…ごめん」 そう言って、平助は離れた。総司は苦笑い、一は微妙な表情をしていた。 「じゃあ、朝餉が終わった後にゆきこを広間に呼ぶ。それでいいな」 「一般隊士達には極秘で行う」 「くれぐれも他言無用でお願いします」 広間にいる全員が、顔を伏せていた。その時、障子の向こうから、ゆきこの声が響いた。 「皆さーん朝餉の用意出来ましたよ!!」 「ッ……」 その声に皆が顔を歪めた。そんな中、広間の障子が開いた。 「あれ?皆さん姿が見えないと思ったら集まっていたんですね。朝餉の準備出来てますよ」 何も知らない笑顔に誰も何も言えなかった。ゆきこは何も知らずに笑っていた。総司はそんなゆきこに近寄っていき、思いっきり抱き締めた。 「そ、総司さん!?え?え?どうしたんですか?どこか調子悪いんですか?」 「…なんでも、ないです」 総司は名残惜しげに離れた。ゆきこは総司の行動に首を傾げていた。 「さぁ、せっかくゆきこが用意してくれたんだ。早く行こう」 近藤の言葉で、皆が立ち上がり近藤を先頭に広間から出て行った。 .
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