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目を開けると知らない天井が目に入った。起き上がると、知らない部屋。
此処は…どこ?
そう思ったとき襖が開いた。
そちらを見ると、空がいた。空はゆきこが起きているのを確認すると布団の横に座った。
空「私は空。あなたはゆきこだよね?」
ゆ「えと…はい…あの、此処は?」
空「此処は陽向屋。今日からあなたは此処に住むんでしょ?」
ゆ「あ…はい。お願いします」
そうだ…私、確か途中で気絶しちゃって…ちゃんとお別れしたかったのに…
ゆきこが俯くと、空は手を握った。
空「大丈夫?」
ゆ「あ、はい大丈夫です」
空「じゃあさ、お店に出て貰えるかな?丁度今、満席で…」
空が申し訳なさそうに訪ねると、ゆきこはキョトンと首を傾げた。
ゆ「お店?」
空「うん。此処は甘味処だよ」
そういえばさっきから、甘い匂いがする。ゆきこが頷くと空はそのまま手を掴んでゆきこを立たせた。その細い腕にどこにそんな力があるんだろ…?
空「あ、そうだ。ゆきこは何歳?」
ゆ「十五歳です!空さんは?」
ゆきこの言葉に空を笑って「十八だよ!だから敬語はないね!」そう言ってパチンと片目を閉じた。
階段を降りて暖簾の掛かった障子を開けると、甘い匂いと沢山の人がいた。
お客の一人が空とゆきこに気付いて声を掛けた。
「おぉ!空ちゃん。ん?誰だいその別嬪さんは?」
空「ゆきこって言うの!可愛いでしょ?手出したら怒るからね?旦那!」
空はゆきこをグイッと前に出した。ゆきこは慌てて空を見ると、小声で「あいさつ!」と言っていたため、ゆきこはとりあえず頭を下げた。
ゆ「朱里ゆきこです。これからよろしくお願いします!」
そう言って頭を上げると店の中にいた人達は優しい笑顔で迎えいれてくれた。
隣にいた空の方からバコンッ!とした音がして、隣を見ると空が頭を抑えてしゃがみ込んでいた。
後ろを振り返ると菖蒲が黒い笑顔で空を見下ろしていた。
ゆ「あ、あの…」
菖「私は菖蒲。この店女将をしているわ。よろしくねゆきこちゃん」
ゆ「あ、はい」
菖蒲はゆきこに微笑むと、未だに頭を抑えている空を見て一喝した。
菖「全く…何が手をだしたら怒るからね?…よ、すいませんね旦那」
「いいさ、別に。空ちゃんらしいしね」
菖「すいません…ほら空!あんたも!」
菖蒲は空の手を掴んで立たせた。空は頭を下げて「ごめんなさい」と謝った。
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