―陽向屋―

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気を失ったゆきこの傷口に止血のため上掛けを巻き付けた。そして、空に医者を呼ぶように指示し一人の隊士を護衛につかせた。 そして、後ろで戸惑っている隊士達に葛を飛ばした。 総「地の果てまで追いかけろ!!必ず捕まえてこい!!」 滅多に怒らない総司に隊士達は気を引きしめた。総司率いる一番組は、総司の様子に気づき顔を見合わせて浪士達が去っていった方向に走り出した。 総司はそれを見ると、ゆきこの傷になるべく負担がかからないように屯所に向かって走り出した。 屯所に戻ると、空が門の前で待っていた。総司はそのまま屯所に入っていくと、幹部達を含めた隊士達が不安そうにゆきこを見守っていた。 総司が部屋の中に入ると、医者が待っていた。ゆっくりとゆきこを布団に横たえると医者は顔をしかめた。 「非常に危ない状態ですね…とりあえず、出て行ってもらえますか?」 医者の言葉に、総司は無言で頷くとお願いします。とだけ言って部屋から出て行った。 部屋から出ると、近藤達が総司を取り囲んだ。皆、不安そうに総司を見つめていた。 総「此処で話すと、迷惑になります。私の部屋に行きましょう」 そう言って、総司の部屋に移動した。 部屋の中には近藤を含む土方達が集まった。 近「総司。ゆきこは…?」 総「非常に危ない状態です…」 総司は綺麗な顔を歪めて言った。それを見た土方達はゆきこがどれほど危険な状況なのか理解した。 歳「しかし…どうしてそうなった?」 総「さぁ…私も良くは知りませんが、何でも空さんが浪士達に絡まれている少女を助けたら浪士達が刀を抜いたらしいです。そこをゆきこが助けたらしいです」 山「ゆきこらしいですね…」 山南の言葉に皆、顔を伏せた。確かにゆきこらしいと思ったが、そんなことをさせる為にゆきこを出したのではない… 総司は手を握り締めた。その手は真っ白になっていて手のひらには爪が食い込んでいた。 そんな総司に気付いた土方は無言で立ち上がり総司の腕を掴んで立たせ部屋の外に出させた。 部屋の外に出た二人は土方が総司の腕を掴んで、そのまま歩いていた。 総「ち、ちょっと!土方さん!?」 歳「うっせぇ、少し黙って着いてこい!」 土方の言葉に総司は大人しくなり、そのまま着いて行った。 .
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