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総司はゆきこがいる部屋まで走っていき、静かに襖を開いた。総司はゆっくりとゆきこが寝ている…というか、気を失っている布団にそっと近寄ると、横に座った。
ゆきこの手を握り締めても、握り返してはくれない。顔は血の気がなく、どう考えても危ない状態だと分かる。
総「ゆきこ…」
こんなゆきこを見るのは、初めて会ったとき以来かもしれない…でも、あの時よりも心配で、なにより罪悪感が大きい。
今さらだが、何故もっと早く駆け付けてあげられなかったのか、後悔だけが心の中に渦巻く。もっと自分が早く行っていたら…
総「…ごめんな」
ついつい、気を抜いて何時もの敬語が消えた。普段から気をつけていたが余程、気が動転してるらしい。
ゆきこの手に握っている手に視線を落とすと、手が震えていた。もし…もしゆきこが死んだら…あの時、必ず助けると言ったのに…
空を励ましてはいたが、総司の着物をすがりつくように掴んでいた小さな手。
あの行動はきっと無意識だったんだろう。
総司はそっと頬に掛かっている髪を払った。総司が払うと、ゆきこはピクリと反応した。
総「ゆきこ…?」
呼びかけると、またピクリと反応した。そのまま髪を撫でていると、ゆきこはゆっくりと目を開けた。ゆきこは一回ゆっくりと瞬きしてから総司を見た。
総「ゆきこ?」
ゆ「…総、司…さん?」
ゆきこはゆっくりと手をついて起き上がろうとしたが、顔を歪めて布団に倒れ込みそうになったところで、総司がゆきこを支えた。
総「動かないで下さい。お腹に穴があいているのですよ?」
ゆ「あ…はい」
総「まだ寝ていて下さい」
総司はゆっくりとゆきこを寝かせると髪を撫でながら静かな声で囁いた。その囁きにゆきこは段々目を閉じていく。
だがゆきこは不安そうに総司を見上げていた。総司は安心させるように微笑むとゆきこは着物の裾を掴みながら目を閉じた。
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