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目を開けると久しぶりの天井が目に入った。手に温もりを感じて目を向けると総司が座ったまま眠っていた。
一度起きた記憶があるがよく思い出せなかった。
何気なく手をついて起き上がろうとした瞬間、脇腹あたりに劇痛がはしった。
その時、先程の浪士達に絡まれた時の記憶が蘇った。
思わず、口から喘ぎ声が出た。
すると、総司が目を開けた。
総「ゆきこ!?」
ゆ「そ…じ…さん…」
痛みに顔を歪めながら総司を見ると、総司は慌ててゆきこの肩を支えた。
そして、ゆっくりと寝かした。
総「まったく…無理しないで下さいよ…」
ゆ「ごめ、んなさ…い」
そう言いながらもゆきこは、どこか眠たそうだった。
総司がそっと髪を撫でるとゆきこの瞳はとろとろと閉じていく。
ゆ「総司…さん…」
総「はい?」
ゆ「私が…迷惑…掛けたから…だから…」
その言葉に総司は唐突に悟った。あぁー…この子は自分が邪魔だと思ったから新選組から離されたと思っているんだ…
だから総司はゆきこが望む言葉を答えた。
総「私たちはあなたを迷惑に思ったことなど一度もないですよ。大丈夫です。私たちはあなたが大切ですよ」
その言葉にゆきこは子供のようにふわりと笑った。
新選組から離れて一週間、ずっと考えていた。
私が邪魔だったから?私が迷惑掛けたから?だから、新選組から離されたの…?
心の奥底に溜まっていた真っ黒い何か…
でも、その言葉に真っ黒い何かが無くなっていく気がした。
溜まっていた不安の靄が晴れていく。そんな感じがした。その言葉が心にストンと落ちてきた。
ゆ「あ…りが…と…ござ、ます」
そう言ってゆきこは目を閉じたのだった。総司は、その様子に微笑んだ。
そして、自分も眠りについたのだった。
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