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二週間して、ゆきこはようやく軽く歩くことが出来るようになっていた。
ゆきこはその間、新選組で寝泊まりし少しずつ休養した。
その日、ゆきこはそっと部屋から出た。というより、抜け出した。
ゆっくり、部屋から顔を出して誰も居ないことを確認すると、そっと足を踏み出した。
まだ傷が癒えていないため、自然と歩調はゆっくりになる。その時、
「ゆきこ」
ビクゥゥ!!
ゆきこはギギギと壊れた玩具のように後ろを振り向いた。
そこには、誰もが見惚れるような笑顔を浮かべた総司がいた。
だがゆきこは見惚れるというよりも、青ざめて震えていた。総司の笑顔の後ろには真っ黒いオーラが見えたからだ。
総「ゆきこ?何をしているんですか…?」
ゆ「えっえと…」
ゆきこはしどろもどろになりながら後ろに下がったら着物の裾に足を引っ掛けて倒れ込みそうになり、反射的に目を瞑った。と、同時に腕を引っ張られて暖かい温もりに包まれた。
総「はぁ…全く…だから一人で出歩かないで下さいと言ったのに…」
ゆ「すっすいません…」
総司はゆきこの傷に影響がないように軽々と抱き上げた。
ゆきこはいきなり変わった視界の高さに小さな反抗をした。
総「落としますよ」
だが、総司の静かな冗談に聞こえない言葉にすごすごと大人しくなった。総司はそのままゆきこを部屋に連れて行った。
部屋に戻されたゆきこは総司に布団の上にゆっくりと降ろされた。
ゆきこは少し不満そうに総司を見上げた。
ゆ「もう、大丈夫ですよ…」
総「…つまらないのは分かりますが、もう少しですから、ゆっくりしていて下さい」
その真剣な表情に、ゆきこは頷いた。それを見た総司は満足げに笑って髪を撫でた。
ゆ「…あの…でも、少しくらい駄目ですか?」
総「……分かりましたよ。でも、十分気をつけて下さいね?」
ゆ「ありがとうございます!!」
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