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そう言うと、総司はまた驚いたようにゆきこを見た。その視線に気付いたゆきこは、どうして総司が驚いているのか分からなくて首を傾げた。
総「全く…あなたという人は…私たちが怖くないんですか?」
ゆ「………え?なっ何言ってるんですか!?え?総司さん達が怖い!?ありえませんよ?」
ゆきこはあたふたしながら必死に答えた。それを見た総司は、諦めたように笑った。ずっと聞いてみたかった、やっとその答えが聞けた。それも随分、簡単に
総「クス…いえ、何でもないです」
ゆ「?」
総「それより、ゆきこ。少し寄り道していきませんか?」
綺麗な笑顔を浮かべた総司はゆきこに手を差し出した。ゆきこは少し迷ってからその手をとった。
この人は私が断れないって知っているんだ。だったら私は断れる筈がない。
総司の案内で来たのは、反物屋だった。総司はゆきこの手をひいたまま、店に入っていった。
総「すいませーん。沖田ですけど」
店の奥に呼び掛けると、店主らしき人物が反物を持って出て来た。
「沖田様。御注文の品、出来ていますよ」
総司はゆきこの手を離して店主に近寄った。
誰のだろ…総司さんのかな…?それとも…?そう考えたとき、胸がチクリと痛んだ。なんで?
ゆきこが首を傾げていると、総司が振り返って手招きした。
総司の横に移動すると、ゆきこに店主が持ってきた反物を見せた。
総「どうですか?」
ゆ「綺麗、だと思いますよ。誰にですか?」
総「ゆきこにですよ」
へ?驚いて総司を見つめると、総司は何でもないというように、店主と話していた。
総「では、これに着替えてきて下さい」
ゆきこは反物を手渡されてぐいぐいと、部屋に押し込まれてしまった。
反物を広げて肩くらいまでの高さに持ち上げてみた。その拍子に何かが落ちた。
下を見ると、簪だった。これもつけるのかな…?でも、髪結うの苦手だし…いっか、
開き直ったゆきこは着ていた反物を脱いで、着替え始めた。
着替え終わったゆきこは簪と着ていた反物をたたんで持ってから部屋を出た。
部屋から出たゆきこに気付いた総司と店主は振り返ってから微笑んだ。
ゆきこはおずおずと顔を上げて恥ずかしそうに微笑んだ。
総「綺麗ですよ。とても、似合っています」
「ええ、沖田様が話していた通りの御方ですね」
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