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ゆ「え、えと…」
総「駄目ですよ。この子に化粧は似合いません」
ゆきこが困ったように総司に助けを求めた。が、総司の言葉に少し傷ついた。
そんなに、子供っぽいのかな…
店主はそんなゆきこの様子に気付き慌てて断った。が、総司はその様子に気付かなかった。
変なところで気が回らない総司は、二人の様子に気付かない。
ゆ「……」
ゆきこは無言で総司の着物の裾をツン…と掴んだ。店主は二人の様子を苦笑いで見守っていた。
総「ゆきこ…?どうしたんですか?」
ゆ「何でもありません…店主さん。ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げて、ゆきこは総司の着物の裾を掴んで反物屋から出て行った。
ようやくゆきこの様子に気付いた総司は、自分の着物の裾を掴んでいる小さな手を掴んで、人通りの少ない道まで引っ張っていった。
人通りの少ない道までゆきこを引っ張って来た総司は、ようやく足を止めた。
そして、ゆきこの顔を覗き込んだ。
総「ゆきこ…?」
ゆ「…」
ゆきこはどこか子供のように、下を向いていた。
だが、ゆきこの様子に気付いたが、どうして下を向いているのか分からない総司は、とりあえず何時ものように髪を崩さないように注意しながら撫でた。
ゆ「…総司さんにとって、私は子供ですか?」
総「…え?」
そんなわけなかった。この年下の少女に対する気持ちはずっと前に気付いていた。
愛しいという言葉だけじゃ、足りない。ずっと自分の傍にいて欲しいと心から願える。
もしかして…さっきの言葉?
総「ゆきこ。あなたは私の中で子供じゃないですよ?」
ゆ「…じゃあなんで、私はお化粧が似合わないんですか?」
見上げてくるゆきこの頬にそっと手をあてた。
でも、この少女には化粧は似合わないと思った。そんな事しなくても、この少女は十分綺麗だと思った。
それに…出て来たゆきこを見たとき思わず見惚れてしまった。髪を結って、さらに綺麗になった。
まだ、少女から女性に変わる途中の儚さ。
巡察の時にたまたま見つけた反物屋。入ったときに一目見て、この着物が似合うと思った。
桜色を基本にした、白い花びらを舞い散らした、着物。
あの儚さを持った不思議な少女。
総「あなたは、化粧なんてしなくても十分、綺麗ですから」
ゆ「ツ//////!?」
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