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店はカウンター席と、あとは丸テーブルに椅子が四つある席がいくつかあった。
俺はカウンター席について一番安い物を注文する。
………金がねぇんだよ。
少し待つと、優しそうなおばちゃんが料理を持って来た。
「はい、おまちどう様」
目の前にはおいしそうな料理が並べられる。
腹が減っていたのですぐに食べ終わってしまった。
「食べるの早いねぇ…」
顔を上げるとそこには、さっきのおばちゃんがニコニコしながら立っていた。
「あぁ、かなり旨かったからな」
「おや、そいつはうれしいねぇ」
この人はとても笑顔が似合う人だった。
さぞ昔はモテただろうに…
そんなことを思っていると、またおばちゃんが話しかけて来た。
「お兄さん、ここらへんじゃ見ない顔だけど、旅の人かい?」
「ん、まぁそうなるのかな…。
ある人を探しててね」
「ある人…?」
「あぁ、“火”の発能者を探しに…ね。
ここらへんにいるって聞いてるんだが、知らないか?」
発能者とは、ある特定のことに力を発揮したりする人達のことだ。
例えば、一度聞けばその音を自由に声に出せるようになったり、誰にも負けないくらいの怪力が使えるようになったり、レアな能力になると、獣等に変化出来るようになったりする者もいる。
能力が発症するのに年齢は関係なく、産まれたばかりの赤ん坊から、もうすぐ死ぬっていう爺さんまで幅広く、
いつ発症するかわからない。
ちなみに同じ能力の人はいない。
たまに双子などが同じ能力を発症した、ということを聞いたことがあるが、あくまでも噂だ。
俺がそう聞くと、おばちゃんは目を見開いて驚いていたが、少しすると目を細め、話し出した。
「えぇ、良く知っているよ……」
「本当かっ!!?」
「えぇ、たぶんもうそろそろ来る頃だと思うけど」
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