導入

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 いわく、それが人の恋心の源泉、源流である。  もっとも、すべての魂が出会うという訳ではないし、仮にもともと一つだった魂が出会っても、ぴったり合致するわけではない。人の成長とともに、魂もその形を変容させるからである。  この人以外に考えられない、と思っていても別れるカップルや、離婚する夫婦が存在するのはそのためだ。交際し、人として成長することで魂の形も変わり、求める魂の形も変わってしまうために。  だから、もし、世界に現存する六十億を優に越す人間の中、ぴったり……それこそ隙間なく合致する魂の持主に出会えたのだとしたら、それは奇跡……、いや、運命という言葉がふさわしいであろう。  ――これは、苦境に経たされたことのある二つの魂が、己にはない『強さ』を持ったある一つの魂を求め、互いに影響しあい、成長する物語である。  さて、件(くだん)の一つの魂は、どの魂を選ぶのだろう。
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