春、出会いの季節

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 昨年のことです。とある大手予備校の、京應大学オープン模試を、担任の勧めで受けました。結果は、年二回あるうち、両方で全国一位。  そのことで、天狗になった俺は遊び呆けたわけではありませんけれど、それでも受験生にしては遊びまくり、結局、あえなく落ちてしまい、受験の厳しさというものを実感しました。  このままでは引き下がれません。  それに、もともと俺は勉強自体は苦痛に感じませんでしたし(長期休暇の課題は別です)、予備校の授業には前々から興味がありましたから浪人することに決めました。  高校時代の友人は、「浪人なんて……」とネガティブな発言をしていましたが、とにもかくにも、俺は予備校の授業に一種の憧れを抱いていたのです。  実際、授業は高校の時とは比べ物にならないくらい面白く期待をいい意味で裏切ってくれました。そして、浪人生活は俺に出会いまで用意してくれていたのです。  ☆ ☆ ☆  つい先日あった学力診断テストの出来がおおむね満足するものだった俺は軽い足取りでオリエンテーションに参加しました。  チューター(担任のようなものです)の、鏡の前で四、五時間は練習はしたであろう笑顔を見ながら、話の大半を聞き流します。
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