今夜月の見える丘に

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薄霧に覆われた湖を、私は切り裂くように飛んでいる。 速度の影響か、湖面に衝撃波が発生し、私の通った跡に三角のシュプールが出来ていた。……それは雪を言うんだとかいうツッコミは無しな。 ともかく、高速で飛翔するのは気持ちが良いものだ。 途中、精霊やら妖精やらが現れて邪魔してくるのは難だが、まあ、腹空かしの運動と思えば問題ないだろう。 「……お、見えてきた」 私の真っ黒い右目が、紅い洋館を捉えた。 その名は『紅魔館』、私の今日の目的地だ。 私は羽に力を入れ、より加速する。 ちなみに、この羽から柳の葉のように垂れている布は、実は天女くずれから奪ったものだ。飛翔能力の強化に一役買ってくれている。 「お邪魔しまーす」 私はとりあえず挨拶して上陸し、紅魔館を目指す。 警備の妖精メイド達が現れるが、所詮は妖精だ。軽く撃ち殺していった。……別にいいんだよ、またすぐ生まれるから。 そうこうしている内に、紅魔館の門まで辿り着いた。後は案内でもしてもらいたいものだが……。 「何だ貴様は!?」 ……案の定、私の前に門番が立ちはだかった。 『彼女』はきびきびとした形相であり、私の方を鋭い視線で睨んでいた。 出来れば穏便に済ませたいが……。 「ちょっとお宅に用があるんだけど、通してくれない?」 私は前進をやめ、門番に呼びかけてみる。もっとも、効果はそれほど期待していないが。 「貴女みたいな人が来るなんて聞いてない。専守防衛に回らせてもらう!」 ……やっぱりか。 どうも幻想郷は好戦的な奴が多くていけない。というか、彼女は言葉の意味を理解しているのか? 「なら、仕方ないね」 私は若干呆れた調子で言い、スペルカードを取り出す。 さて、こうなった以上は弾幕勝負で決めるのが幻想郷のルールだが……用が用だし、そうそう時間もかけていられない。 よし、もう一度頼んでみるか。 「ならさ、私も急いでるし、スペルカードは一枚同士で勝負しない?その方が楽で良いでしょ」 今度は、それなりに丁寧な態度を作って言ってみた。 どう出るか……。 「……分かったわ。ならそれで行こう」 よし、乗ってくれた。 私は心の中でガッツポーズを浮かべ、スペルカードを差し出す。 相手も同様に、詠唱にかかったようだ。
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