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「それじゃ、フランちゃんによろしく。ムテキング自重って伝えといてね」
「何よそれ……あんまりおかしなこと吹き込まないでよ?」
私は手を振りつつ、玄関の方に足を向ける。
レミリアの方は苦笑いだったが……まあ、元々そう親しいわけでもないからいいだろう。
その別れ際、窓からは真っ赤な月からの光が館に射し込んでいた。
それを浴び、仄かに赤く輝き、影とのコントラストが冴え渡るレミリアの姿は、まさに館の主として相応しかった。
満月ともなれば、吸血鬼の血が騒ぐのだろう。メイド長あたりは既に吸われてしまってる気がするのだが、どうなんだろうか?そういえば、血を吸われる側は性的な快感があると聞くが、そう考えると……
「……メルティ様、お帰りで御座いますか?」
そんな事を考えていると、件のメイド長が私に尋ねてきた。その態度は、初対面時と180゚真逆だ。
「そうだけど……どうやら私はお客様認定されたようね」
私は冗談に皮肉を少々振りかけまして答える。
すると先方は、特にかしこまるでもなくつらつらと理由を述べだした。
「まあ、不法侵入は色々とアレですが……妹様の純粋な笑顔を家の者以外に見せるのは、非常に珍しい事ですので。信用できるかと」
なるほど、瀟洒な見解だ。
まあ、そもそも彼女が出歩く事自体そうないだろうからな。他に知り合いといえば、例の二人ぐらいだろうか。
「こりゃ有り難ぇなぁ。そんじゃ、おいとまさせて頂くわ」
「はい、お気をつけて」
咲夜は私に向かって一礼し(非常に良い気分だ)、重そうな扉を開けた。
開いた扉より月光が降り注ぎ、私の身体を照らした。
こういうすがすがしい時、ハイな人は鼻歌でも歌いたくなるのだろうか。
「さ、蝙蝠が鳴くから帰ろか……」
私は羽を広げ、宙に浮く。
私はゆっくりと奇怪なそれを羽ばたかせ、景色と同化しながら、湖の方へと飛んで行った……。
―――――
「う~、ありゃ?」
紅魔館の前で倒れていた妖怪、《紅美鈴》ははたと起き上がった。
「いつの間にか夜に……ってアレ?」
彼女は目を擦りつつ、脇に置かれていた肉塊の方を向いた。
それには、メッセージカードが挟まれている。
「『森で捕れたお肉です。腹の足しにでもして下さい。メルティより、愛とお詫びを込めて』……誰?」
彼女は不思議そうに首を傾げた。
その遥か彼方を、一つの影が高速で飛翔していた……。
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