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「……こんなところか」
森の中から適当に集めてきた、茸やら野草やら木の実やらを眺めつつ、私はぼんやり呟いた。
これだけあれば、適当な食事は作れるだろう。
食事とは、人生の楽しみの中でも重要な位置を占める事項だ。多少抜いたところで死ぬわけではないが、摂っておくに越した事はない。
「そろそろ起きる頃かな……ん?」
ふと、遠くの方から、ガサガサというお決まりの物音が聞こえてきた。
私は採ってきた物を帽子の中に納める。
この帽子は一種の魔法で出来ていて、とりあえず物をしまうのに使える。本来はもっと高次な用途があるのだが、日常生活ではこれぐらいがちょうどいい。
私は羽を動かし、音のした方向に飛ぶ。続けて、右目を見開いてその発信源を探した。
するとそこには、草むらに隠れる中型の野生生物が居た。
それはシルエットからして、なんとなく牛っぽい。
最近見かけるようになったとかいう、巨獣キングなんとかだろうか?いやいや、どこぞのワーハクタクの知り合いかもしれないし、或いは、単なる牛の妖怪かもしれない。
「肉かぁ、肉もいいなあ」
私は食卓に並ぶビーフステーキを想像し、思わず舌舐めずりをしてしまった。
いかんいかん、無駄な殺生は禁じられて……禁じ……夜摩天に怒られ……
気付いたら私は、その牛の妖怪の前に立って、スペルカードを取り出していた。
向こうさんも、私を見て興奮したのだろう。臨戦態勢を整えている。
どうやら、そんなに頭の良い妖怪ではないようだ。まあ、人間を襲うのが妖怪の本義ではあるが……。
「さあ牛!ご馳走になってもらうよ!これは決闘じゃないから覚悟しな!」
私は一応のタンカを切り、牛を睨む。
向こうも唸り声を上げ、闘牛よろしくこちらに突進してきた。そして応戦のため、私はスペルを唱える。
混沌「キマイラフレイム」
牛が後ろ足を蹴って飛び掛かってきた瞬間、私は右手にエネルギーを集中させ、牛に向ける。
その差し出した右手がフラッシュし、牛を文字通り丸焼きにした。
今私が放ったのは、所謂プラズマだ。
右手に収めた微粒子を極度に熱し、物質を電離状態にする。この時点で物質の温度は五桁に達するため、後はそれを電磁誘導で相手にぶつけてやればいいだけだ。
普通なら跡形もなく蒸発するのだが、流石妖怪、焦げるだけで済んだみたいだ。
……そこ、フレイムとプラズマは別物とか言うんじゃない。
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