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「グオ、グオォォ……」
牛が呻き声を上げる。とりあえずトドメを刺すとしよう。
「貴方からは……とりあえず魔力かな」
私は牛の胸あたりに、手のひらをあてる。
その手のひらを媒介して、私の身体に、別のモノが入り込んでくる。身体が充実してくるような、満ち足りるような、そんな気分だ。
私は、倒した相手から『能力』を一つ奪い取る事が出来る。
奪えるものは精力、魔力、特技、その他諸々……一くくりに出来るものなら何でもだ。
ただし、能力は弱った相手からしか奪えない上、奪った能力は使うときに著しく劣化してしまう。
だから私は、奪った能力を色々と組み合わせて使う。さっきのプラズマも、熱を起こし、電磁を操り、魔力で強化することで作り出したものだ。
それ故、私の技は応用が効く。流石に特化したタイプの技には劣るが、意表を突く事には自信がある。……それなりに強いという自覚はもってるつもりだ。
「ガァァ………」
……説明はこの辺にしておこう。
目の前の牛は、私と対照的に衰弱しきったようだ。持って帰るにはちょうど良い頃合いだろう。
「よいしょ」
私は左手で牛を掴み、ひょいと肩に乗せて運んでいく。
……なんとなくいい匂いがした。
―――――
「ただいま~。起きてた?」
私は玄関の扉を開け、小声で呼び掛ける。
私はこっそりと、音を消して入室したが、奥の方から『う~ん』という感じの声が聞こえてきた。なんと都合の良いタイミングだろうか。
「あちゃ、起きちゃったか」
亡骸と化した牛を台所に置き、私はベッドに直行した。
(後で分かった事だが、この牛はどうやら食用にして問題ない、珍しいタイプの妖怪だったようだ。良かった良かった……か?)
「あ……おはよ、メルティ……」
寝ぼけた様子で眼をこすりつつ、小人のような少女が目を覚まし、私に朝の挨拶をした。
ああ、やっぱり可愛い。別に変な意味は無いが。
「……おはよう、テレサちゃん」
私は微笑みつつ、挨拶を返した。
……今日も良い1日になりそうだ。
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