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「…ぃゃ」  小さく首をふりながらようやくの声を絞り出した。途端に景色が現実味をおびて恐怖が増す。  これは現実? 「…!?」  口の中に鉄の味が広がる。頬に焼けるような痛みを感じてようやく殴られたと理解した。  身体が動かない。痛みと恐怖が嫌悪感を凌駕していた。  温かいものが目から零れ落ちる。凍りついたように声は喉の奥で固まったままだった。  ただ…。  人形のように横たわっていた。
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