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「由布」  私が声をかけると由布はエプロンを外しながらにこりと笑った。 「今日は目玉焼きとトーストだよ」  キッチンには良い香りがたちこめている。  朝の香り。  私は冷蔵庫を開けて牛乳をだした。永遠に縮まることのない私と由布の違いへの、これはささやかな抵抗。  しってかしらずか由布は苦笑を浮かべている。  コポコポとコップに注ぎながらトーストをくわえた。 「こら、お行儀が悪い」  途端に由布が頭をこつんと軽くはたいてきた。  キツネ色に焼けたトースト。  朝の光景。  そして今日は…。
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