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私たちはゆったりと朝の日常を味わってから家を出た。このくらいの幸せは許されるだろう。
二人で歩く。昔からいつも一緒だった。ずっと。
そうしてしばらく歩いていると目標が目に入った。 綺麗な、艶やかな黒い髪。
華奢な体つきの女生徒。
「全く…」
横では由布が怒りと哀れみとがない交ぜになった複雑な表情でため息をついていた。
誰に対する怒りか。
誰に対する哀れみか。
「こら。ため息をついたら幸せが逃げちゃうんだよ」
すかさず由布の頭をはたく。朝のお返しだった。
「これ以上?」
「そう。これ以上」
しかめつらしく頷くと大仰に由布は口をふさいだ。
「それは大変」
クスクスと二人で笑いながらこれ以上なんてないことは二人とも口にはしなかった。
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