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 不安げな眼差し。  どこか怯えたような挙動。  …でも。  でもまだまだだ。  まだ足りない。  それは私たちが一番よく知っている。この程度ではなかったと。  少女を学校へと誘いながら道を歩く。学校の校舎。さざめくように喋りながら歩く生徒達。  ふいに空気が変わった。  由布が鋭く目を細める。その先には少女が立ち尽くしていた。  冷ややかなどこか異質な目付きで。少女はただ立ち尽くす。  ああ。ダメだったか。  特別落胆はしない。  優しい友人の仮面をつけたまま心の奥底でそんな思いがよぎった。  少女を学校へと誘う。  どちらにせよ。  おしまいは近い。  少女と歩調を合わせて歩く。  ああ、この平穏なかりそめの日々も今日で終わりなのかと名残を惜しみつつ。
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