もう、怒りの隊長

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ピッピッと目の前に表示されている電子パネルに、指先を素早く叩く。 山積みになっていた書類を次々と片付けていく。 それをする時、怒っています。 今は、部屋は冷たく無慈悲なピリピリとした空気です。 「………何で報告した?」 まるで日本の仏教に出てくる閻魔さまのような、表情を浮かべています。 こわいです、すごく。 背後には壁。 目の前には、閻魔様です。 閻魔様こと――この人は、自分・真っ白の上司です。 名前は、海 雪月(うみ ゆきづき)と言います。 設立された部隊の隊長です。 部隊は、世探求(せたんきゅう)と呼ばれています。 正式には、世界創世史探求部隊(せかいそうせしたんきゅう)です。 小バカにされているような呼び方ですが、長いし噛むので。大概がそう呼びます。 「軍人の義務です。情報隠蔽なんて違反で……」 「日本じゃなあ、これは、墓荒らしなんだよ」 掴んでいた首襟をやっと離して隊長は、隊長の椅子や机を蹴って暴れる序章を見せ始めました。 片付けは、自分がやるようなんですよ。 あぁ、請求書や不始末が怖い。 自分がやるのに、後始末を…… 「サクラとタネは、ナノマシンのサン――」 サンプルという言葉が言い終わる前に。 ビッ、ザクッ。ナイフが飛んで、真横に刺さりました………。 「真っ白、出ていけ」 魔王の視線のように、睨んだ。 失礼しましたぁー………と聞こえないように、部屋を出た。 隊長が怒るのも無理ないですけどね。 軍の上層部は、ある事件の被害者たちを科学技術のサンプルにしか見なかった。 表向きには、埋葬され、墓も建てられている。 しかし、裏では、亡くなっても被害者たちは騒ぎ立てられている。 半世紀の歴史を知るために。 ――報告書を偽造すれば良かった………。
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