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短大における二年間はあっとあう間に過ぎて行った。
既に周囲は就職活動で慌ただしくなっていた。
「ねぇ、涼子は卒業したらどうするの?」
「特に決めていないの。
アルバイトでもしてゆっくり考えようと思って。」
「あなたらしいわね。
私は出版社で働くの。
そしていずれは自分で小説をかきたいわ。」
二年の間に節子は三人の男と恋愛をした。
しかし誰ともうまくいくことはなかった。
みな、節子にとっては退屈であり、男達にとって節子はつかみどころのないうたかたのような存在であった。
節子は相手に対してはストレートなものの言い方をした。
しかし自分の感情は決して相手には出さなかった。
節子の心は氷で覆われた湖のようだった。
表面は硬く、あらよるものを拒んでいる。
でも、中は深く、とても静寂な世界だった。
一方、涼子の方は恋人と呼べる男とは一人も出会わなかった。
節子が紹介してくれて、食事に行ったことがあった。
田村たかしという名前の男だった。
見た目はかっこよく、話も聞いていて飽きなかった。
しかし、テレビに出てくるような人だ、というのが涼子が抱いた印象だった。
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