未定

19/20
2530人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ
全身が硬直して動けずにいると、いきなり肩をぐっと掴まれ、後ろの壁に押しつけられた。 「…っ!」 背中に衝撃が走り、 思わず声が漏れてしまう。 一瞬で視界が変わり、 目の前に陰が出来た。 視線を上げるとそこには、男の人が私を睨みつけ、刀を突き付けたまま立っていた。 お互いの視線が初めてぶつかり合う。 射抜くように鋭い眼光、 澄み切った、まるで深海のような瞳。 片方の目は、長い前髪のせいで隠れていた。 整った顔立ちだけに、 きつい印象に見える。 「…何故、女がここに居る…?」 その口調は、怒りを孕ませていたが、 ほんの少し戸惑いも感じられた。 えっ… ば、バレてる!? 「…答えなければ、容赦なくこの場で斬り捨てる」 ええっ!! ちょ、ちょっと待って頂けませんか、それは!! でもど、どう説明すれば… 下手に嘘をつけば、斬られそうな勢い。 かといって、正直に話してもいいのだろうか。 「あ、あの…わた…じゃなくて僕は…」 プチパニックに陥った私の声は震えて、 しどろもどろだ。 額に脂汗が滲み出る。 ぜったい今の私、顔引き攣ってるよ。 もうこんなんじゃ、女ですって肯定してるようなものだよね…。  
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!