囚われし過去、冷たき雨と泪

2/19
2530人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ
「ただいまー」 三階建ての一軒家。 アンティーク調の玄関ドアを開けて、 家の中へ入った私は、いつもの様に言う。 けれど、誰かが出迎えてくれた時に、言ってくれる筈の"おかえり"というたった四文字の言葉は、電気を点けていない真っ暗の空間に吸い込まれたまま返って来ない。 これも、いつもの事だ。 「おかえり」 だからこの言葉は、 自分で自分に言うしかなかった。 玄関の扉に鍵を掛けた私は、履いていた学校指定の黒色のローファーを無造作に脱ぎ、少し重たい足取りで二階のリビングダイニングへと向かった。  
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!