メトロノーム

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 交差点とビル街には見覚えがある。けれども、それだけだ。ここがどこで、僕は何をしたかったのか、ふと気づく前の記憶がない。もしかしたら、似たような風景を目にしたことがあって、錯覚しているだけかもしれない。  奇妙だ――思いながらも、彼らと同じ方向に体を向けた。立ち尽くしたままでいても、誰かが動けば邪魔になる。第一、何かが解決するわけではない。とりあえず彼らに従っていたら、いつかは彼らの行く先がわかるし、僕もそれは見てみたい。  そうして、僕の加わった葬列は、長い時間をかけた揚句に一歩進んでは止まり、また長い時間立ち止まっては一歩進むという、遅々とした行進をした。相変わらず、誰もが黙して語らず、表情を変えない。不気味ではあったけれど、葬列に華やかな空気は不要だろう、と思うことにした。もしかしたらこれは、国家を挙げての葬儀なんだろうか。これだけの人の数も、考えようでは自然に見える。
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