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「郭嘉さんは好きな人はいるんですか?」
その質問は突然だった。まさかその「好きな人」当人からの質問だった。これをきっかけに
「貴女です」
と告白すればいいものを
「今のところ、特にいないですよ」
と、答えてしまった。
「そうですか……。おかしいですね……」
彼女はそう言って首を傾げた。
この彼女の質問と仕草から考えられるのは、
「誰か」から自分に「好きな人がいる」
ということを聞いたということだ。
こういった「恋バナ」ていうのは定番の話ネタで、自分としては好きではない部類の話である。
ましてや、当の本人にすら告白すら出来てないのに、自分にそんな話がたっているのなら尚更、好きになれない。
「誰からかその話を聞いたのですか?」
ひとまず話の元凶を確認することにした。
「賈クさんです」
「!」
あの人か………。
大抵の噂、話もとには賈クさんがいる。
自分が恋バナを好きではないことと、自分の「好きな人」を知っていながらあえてその
「好きな人」
にこうゆうことを吹き込んだことに怒りを覚えたが、逆に考えててみるとこれはチャンスだ。
「賈クさんですか…。そういう貴女は好きな人はいるんですか?」
彼女の名を口にする。
「荀イクさん」
彼女は『荀イク』。字(あざな)は文若。
「王佐の才」と言われ、君主・曹操に漢の高祖・劉邦の軍師「張良」に例えられた程の実力者だ。
彼女はまさに内政から全てにおいてその手腕を振るう。
いままさにその実力を発揮したところだ。
自分の与えられた書類の量の倍の量を量の少ない自分より先に終わらせた。
「いますよ」
その言葉を聞いた瞬間、今までにあった告白のチャンスへの後悔と出来なかった自分への不甲斐なさに落胆した。
「郭嘉さん」
「!?」
次に出た言葉には驚いた。
まさか、自分の名前が出てくるとは思わなかった。これは
「両思い」
なのではと喜んだのはいいが、すぐにぬか喜びに変わった。
「曹操様」
「……へ?」
「あと賈クさんに公達、夏侯惇さんに夏侯淵さん、程イクさんそれから………」
次々に名前が出てくる。これはつまり……、
「…荀イクさん、まとめると皆ということですか?」
「!!、そうですそれです!」
彼女は自分が出した言葉に頷いた。
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