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仕事中の休憩でぼーとしていた王允に小柄な少女が近づいて抱きついた。
「おーいん! あーそぼ!」
現リュウ社社長・劉協である。
劉協はまだ、小学生ということもあり劉協の親族で人望、実力もある『劉虞(りゅうぐ)』が後継人として会社を切り盛りしている。
「ああ、すみません。まだ仕事の途中でして……」
少し困った顔を王允は劉協に向けた。
「うー。だったら仕事が終わってからはダメ?」
頬をぷうっと膨らませて上目遣いで王允を見る。
劉協にこれをやられると王允は断れない。
「……仕事が終わってからなら……」
劉協は目を輝かして喜びを満面の笑顔であらわした。
「約束よ! 絶対ね?」
「はい、約束です」
そう言って二人は指切りげんまんをして、劉協は自分の部屋に帰っていった。
王允は仕事を再開する。
「呂布さん。貴方にひとつ言っておかなければなりません」
これは、呂布が董卓を誅した後のこと。
「なんだ、王允」
呂布の拳には董卓のかえり血がついて下の地面に垂れている。
「貂蝉はもういません」
「!?」
呂布は目を剥き王允に掴みかかる。が、王允は表情を変えずにメガネを外す。
「お分かりになりましたか?」
無言で王允から手を離し、呂布は膝をつく。
「王允、ひとつだけ訊く。……貂蝉は俺のことをどう思っていた?」
力のない声色で問う。
王允は呂布の問いに答えた。
「 」
と――。
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