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「で、張シュウ。鄒は?」
「以前言った申した通り、我が家にて療養中です」
張シュウは青白い顔のまま、曹操に面と向かってハッキリと言った。
曹操の後ろには典韋が控えている。
曹操は窓辺の生徒会長席に座っている。
もし、襲われるなら曹操の背後の窓からだろう。
カーテンはしめられている。
「……確か、降伏の文には
『鄒との謁見』
とあったはずだが?
約束を破る形になればどうなるかわかっているな」
けして獲物は逃がさないという猛禽類の目をして張シュウを見つめる。
「…………」
張シュウは胃が押し上げられ、しゃべることも呼吸することすらも出来ない感覚に陥(おちい)った。
ますます青白くなる顔、吹き出る汗の量を見て賈クはここまでかと思い、口を開く。
「恐れながら」
「何だ?」
「私は張シュウ様の補佐をしております賈ク、字は文和ともうします。
どうやら、我が主人は先程から体調を崩しており、これ以上は答えることは無理かと」
恭しく賈クは上目遣いで口元を隠し、曹操に言う。
「で?」
「一度、主人を保健室に連れて行きますのでそのあとは私が全てお答えしますので――」
「……運ぶのは、典韋にやらせる。誰か案内をつけろどうせ、その辺にいるんだろ?。で、賈クはここに残れ」
「……分かりました。胡車児」
戸の反対側にいた胡車児は戸を開け、姿を現した。
典韋は張シュウを抱え、生徒会室から退出した。
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