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今日も同じ場所でギターを握っていた。コード進行なんてどうでも良いと考えるこの男は、奔放な曲構成で一目置かれる存在になりそうでならなかった。実力不足や何か問題があるわけではないのだけれど、聴き手が「もっと聴きたい」と思ったところで曲が終わってしまう事が多く、勝手な暴れ馬、優しい暴れ馬などと呼ばれ、好みの分かれるアーティストといわれていた。
ライブに精力的に出る事もしないこの男は、まるで自分の曲を人に好かれるのを嫌がっているようだと囁かれる事もあった。
日本人離れした顔の優しい暴れ馬、ジェニィ。男は歌以外で口を開く事がほとんどなく、なんの説明もなしに淡々と、自分の弾きたい曲を歌って帰るだけのこの男がどこで生まれたのか、そんな実にどうでもいい事にまで興味を引かせる力があるのに、人気に歯止めがかかっているのは需要に供給が無いという状態に人は耐えられないからだ、と分析する人間もいた。
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