第一章・第一話「始まりの始まり」

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夕食も食べ終わり、寮の自室に戻る。 なんだかんだで慣れつつあるこの生活。 親父に無理矢理通わされてるだけだったのに、今では学園に行くのが楽しみだ。 小学から中学までの9年間、俺は学校に行かなかった。 それには理由がある。 仕事で忙しく、滅多に家にいなかった両親。 病弱で、家にいることが多かった義妹・ティア。 そりゃ、メイドとか執事みたいな使用人がいるから、不自由はない。 だが、当時ティアは4才。 そんな幼いころから大人に囲まれていたくはないだろう。 それで俺は、入学して間もない小学校をやめる決心をしたのだ。 フェイト「ティア……、元気にしてるだろうか。また泣いてやしないかな」 病院に行ってたから、出るときに行ってきます言えなかったんだよな。 電話……してみようか。 と、小型の通信機を取り出す。 これは、まぁ携帯電話みたいなものだ。携帯と呼ぼう。 ただ、“魔科学”という技術から生まれたもので、現代にある科学とはまた異なる。 それについては追々説明するとしよう。 フェイト「…………」 ケータイのキーを押し、電話をかける。 トゥルルルル…… ……ガチャッ ティア『もしもし、…お兄さま?』 フェイト「あぁ、久しぶりだな。ティア」 ティア『うん……ビックリした。お家に帰ったら、お兄さま、いなかったもん…』 家に帰った。…てことは、体は大丈夫みたいだな。 声も元気そうだ。 フェイト「ごめんな。休みのときは必ず帰るから、泣かないで待っていろよ?」 ティア「な、泣かないよ…ティア、もう子供じゃない」 フェイト「ははっ、……あぁ、そうだな。もう12才だもんな」 ティア「あ、そういえばお兄さま……ティア、また新しい魔術、使えるようになったよ」 フェイト「お、そうなのか?じゃあまた見せてくれ。どんな魔術だ?」 勉強熱心だな、ティアは。 ちなみにティアの魔術の腕は中級魔術士クラス。 わかりやすく言うと学校の先生並み。といったところだ。 正直、12才という年齢ではありえないほどのレベルなのだが、この病弱さ故、逆にその才能が残念である。 ティア「うんっ、…あのね?」
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