第一章・第一話「始まりの始まり」

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放課後。 校舎から寮に戻る途中、ひとりの女の子とすれ違った。 そのブロンドの長髪は、まるで重さを持たぬもののようにふわりとそよ風になびき、夕日のまぶしさに薄く閉じられた瞼からは長い睫毛が伸びる。 その外見は、さながらフランス人形といったところか。 ??「ごきげんよう」 さりげなく頭を下げ、通り過ぎる少女。 その仕草、立ち居振る舞い。外見によく似合った言葉遣い。 それらはまさしく淑女と呼ぶにふさわしいものだった。 フォルテ「はぇ~……いるんだな、美少女ってのは」 フェイト「……………」 俺は言葉を口にすることが出来なかった。 特別、女性に興味があるわけでもない。だが… フォルテ「おい、フェイト。何見とれてんだよっ」 フェイト「なっ!俺は別にっ!」 見とれてしまっていた。 その可憐さに。 フェイト「馬鹿言ってないで帰るぞっ、ランドが食堂で待ってる」 フォルテ「はいはい、了解で~す」 同じ学校だからな。 またいずれ会うことがあるだろう。 ………その時は、名前くらい、…聞いてみるか。 ………………。 ………で。 ランド「あ、二人とも遅かったじゃないか」 フォルテ「やぁ~、済まね。ちょっと外せねー用事だったんだよ」 フェイト「……ナンパ同然じゃないか、あんなの」 何故、ランドだけを先に帰らせていたかというのが、そのフォルテの言う外せない用事。 具体的に言えば、ナンパだ。 ひたすら校舎を歩き回り、めぼしい子には適当に声をかける。 明らかにナンパなのだが、本人は…… フォルテ「いや、あれはな?他のクラスの子たちと交流を深めるための……」 などとほざく。何故俺をつき合わせたのかは謎だが。 ランド「はは…、まぁなんでもいいけどね。とりあえずご飯にしようよ」 フェイト「そうだな、俺も腹が減った」
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