その一…黄華

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素性が解らないように、俺たちはそれぞれの名を異国の呼び方で呼び合い活動した。 かんなを見つけるまでには1年を有した。情報収集に長けた柊ことホーリーの話では、一軒の長屋に住んでいるとのこと。身を隠すことに長けたリラ…ライラックの話では、かんなは事件よりも前の記憶を失い、盗賊の囲い者を母親だと思っているらしい。 真実を教えなければ…。 その一心で、俺は長屋へと入っていった。 嵐の夜は俺の進入音さえも消し去り、明かりのない部屋は闇に包まれていた。布団に横たわっている女、部屋の隅で壁により掛かっている子どもの影…男の姿はなかった。 「…かんな」 小さく名を呼ぶが、子どもの影は反応しない。眠っているのだろうか?それを確認する術はない。 「ん…誰だい?あんた」 それまで布団に横たわっていた女は俺の声で目を覚まし、体を起こした。外で轟く雷によって俺と女は互いの姿を認識した。 「誰…?強いて言うならばお前の男に大切な者を奪われた奴だな。…かんなを返してもらう」 主と奥方は亡くなった。だが、かんなには家も、待ってる人もいる。
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