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「……」
「……」
無言のまま食事が進む。だが、元々黙って食事をする家ではないのだろう。皆そわそわしている。“皆”といってもここには4人しかいない。邸の主、その妻、かんな、そして俺だ。3人は俺を見て、俺の言葉を待っている。
「…どう?」
先に声をかけてきたのはかんなだった。
「…食えない物はない」
食べようとすれば道に生えた草でも食べられる。だが、そういう意味で言ったのではない。美味しかったが、そこまでじっと見られると悪態をついてしまうのが俺の性格。きっと作ったかんなは気を悪くするだろう。
「よかった。気に入ってくれたみたいで」
「……」
あの言葉からどうやって気に入ったと考えられるのか…。
「不味かったら完食なんてしないものね」
かんなはお膳を指さし…笑った。人を嘲るのではなく、嬉しそうな笑み。
「黄花」
桐谷は優しい声で俺を呼んだ。
「…はい」
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