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「ねぇ黄華、遊びに行こ!」
出かける時、かんなは必ず俺を誘ってくれた。世話役として信頼してくれているのか…。出先で見る風景はどれも色鮮やかで、見慣れた物さえ違うもののように見えた。
「今日も楽しかったね~」
夕暮れ時。歩き疲れて木の根元に腰を下ろしたおれとかんなは人が急ぎ帰る中、ゆっくりと話していた。
「また見れるといいね」
「見られるだろ」
この先も…ずっと。
「……」
「…かんな?」
話をしなくなったかんなを横目で見ると、幸せそうな顔のまま眠っていた。
「…このままだと風邪引くぞ」
だからといって羽織を持って出てきたわけではない。俺はかんなを背負い、帰路を急いだ。
この幸せを守りたかった。
今を守りたかった。
かんなを―――守りたかった。
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