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夜に感じた嫌な空気。そっと障子を開けると数人の人影が見えた。
「…誰だ?」
暗い闇も月の光で物を見るにも苦労しない。俺が声をかけたのは、体格のいい男と、少女を連れた細身の男。
「盗賊さ。ここの全てをもらいに来たんだよ」
闇に溶けていく声。その声は俺の心に絶望をよみがえらせた。
「ふざけるな!!そんなことさせてたまるか!!」
「…煩い子どもだ」
男が溜息をつくと、向かいの襖が開いた。
「…どうしたの?黄華」
その先にいたのはかんなだった。
「逃げろ…かんな」
かんなの奥には主と奥方がいる。彼らを起こして逃げろ…俺は心の中で叫んでいた。
「おや、可愛いお嬢さんだ。さぞ血の紅が似合うだろうねぇ」
男はそう言いながら鈍色に輝く刀を抜いた。
「やめろ!!」
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