勝頼と信伊

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  「機嫌が良いようだな。もちろん、長坂殿が景虎の馬を奪ったとの活躍は、城下でも噂になっている」 「ふふふ、馬を得たことで機嫌がよくなるほど、私は物欲が強い男ではない。それ以上の土産話を、勝頼殿のために携えてきたのですよ」 「ふむ?」 「勝頼殿を武田のお屋形様にする方策を得た、とも言える」    長閑の言葉を聴いた勝頼は、表情を険しくして、叫ぶ。 「口を慎め!」 「……」 「俺は武田の棟梁となることを望んではない。しかし……兄上が不出来ならば、武田家の将来のために渋々取って代わろることはあろうがな」    声を低くして言う勝頼だが、目元には喜色が浮かんでいた。     
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