天文10年(1541年)  5月 『海野平の戦い』

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  「当主みずからが他人任せだ。人を率いる力のない男は、棟梁となるできではない!」 「……」  幸隆の父・頼昌(よりまさ)は、先年亡くなった。その頼昌は海野棟綱の娘婿である。つまり幸隆にとって棟綱は義祖父になる。  幸隆から見ても、義祖父には反感を抱いていた。 「代わりに俺が率先して働き、海野に幸義あり、と示してやらないとならねえわけだ。だから幸隆、お前も奮戦しくれ。とくに、あの春原ってやろうは怪しいからな。あいつに俺たちの力を見せておかないといけぬ」 (春原殿が……?)  その言葉を信じられないものの、幸隆は頷いた。  
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