984人が本棚に入れています
本棚に追加
真田郷から、海野城をすぎ、海ノ口方面へと南下しているとき、
「――幸隆様」
と、声をひそめて宗介が発した。視線の先をたどると、夕暮れのなかにうごめく一隊があった。
「あれは、武田のやつらか……?」
「おそらく」
大胆な、と言い、幸隆は黙った。
――敵は、すでに海野の城近くまで物見を出していた。
相手はまだ気づいてはいない。
「敵は、五人か……。二人で斬り込むのは無謀かも知れぬが、ここから逃げても、敵に勘づかれよう。このまま林のなかで待ち構え、近くになったら襲撃する!」
宗介は頷いた。
二人が静かに耳をすますと、敵の会話が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!