鳶色の瞳

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  『若様、ここまで敵の領地に近づいては危険では?』 『いや、問題ない。臆病な棟綱は、兵をひそめたりはせぬ』  そういう内容だった。  幸隆は、海野棟綱が侮られ、しかも性格を言い当ててることにも驚いたが、それ以上に、『若様』と呼ばれていることに驚いた。  かつて耳にした風聞を思いだしていた。信虎には、晴信(はるのぶ)、信繁(のぶしげ)という子がいるのだが、長男の晴信はとことん暗愚で、反して次男・信繁は優秀だという。   (ならば、あれが信繁だろうか?) と、その立派な風采を見つめながら思った。  
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