鳶色の瞳

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   幸隆の馬がいなないた。敵はすぐに騒ぎはじめ、視線を幸隆らがひそむ林にむけた。  幸隆は舌打ちをし、飛び出した。  敵の反応は早く、飛び出すと同時に、一人の武士が『若様』の前に立ち、護衛した。    全速力で駆け寄った幸隆は、立ちはだかった男にむけ、槍を突く。男は敏捷な身のこなしで、鋒(きっさき)をかわし、幸隆の顔に穂先をむけた。  待て、と、男を制止したのは『若様』だった。  鳶色の瞳で見据えながら、「何者か」と訊く。 「俺の名は真田幸隆だ! 貴様の名はなんだ?」  しかし、若様は幸隆の問いにはこたえず、 「海野に勇敢な者がいるとはな。ははは――」 と、笑った。  
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