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顔を凄ませ、幸隆が再度訊く。
「貴様の名を申せ!」
『若様』は笑いを止め、真顔になった。
「何、名乗るほどの者ではない。信春よ、こいつと一騎打ちしてやる。どけ」
(信春――? もしや、馬場信春か?)
馬場信春(ばば のぶはる)――海ノ口城の平賀玄信(ひらが げんしん)を討ち取った勇将として、名をあげていた。
「若様。ここは私に……」と信春が言う。
槍を手に取り、『若様』が騎馬に乗ったまま、前にでた。
「信春よ、たまには我が腕で敵を斬らなければ、鈍ってしまうからな。控えておれ」
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